ミニミニストーリー3・・・・妖怪「あみきり」

<初めの解説>
人気は今一だけどこの妖怪シリーズ・・またまた出しちゃいます。
実は妖怪は人間そのものの心象だったり、世の中への
皮肉であったりするんですね。そこが憎めない存在を
生み出している源だと思うんです。で、今回は「あみきり」
3回目ですが、前々回、前回からつながっています。
では、ごゆっくり、どうぞ。
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まだ3月初めだというのに、やけに蒸し暑い夜だ。
「だるいし、早く帰ろう」。
いつもより少し早めに会社を出た。
駅をおりて、線路沿いの道を、家に向かう。

「どん」  何かが後ろからあたった。
・・「ぎし」  左側から、こするような音。
「ん、ん?」  周りを見回してみたが何もいない。

気のせいか・・・最近、疲れ気味だな。
そう思い、また歩き出した。
ん?なんかバランスがおかしい。
違和感を感じて左をみると、かばんの肩紐が半分以上切れて、
落ちそうになっていた。
「今、何かに引っ掛けたのかな?」
ところが、切り口がまっすぐ刃物で切ったようになっている。
「えっ?な、なんで?」
さっきのは、通り魔か?
だが、ここは一本道。誰かが身を隠せるスペースもない。
そして、人の気配もなかった。

そういえば、同僚の深草(ふかくさ)と昼に行ったとき、
あいつ急に立ち止まってボーっとした後、「クダン」とかつぶやいていたよな?
何故、今、深草のことなど思い出したんだ?。
そうそう、あいつのことよりカバンだ。買ったばかりなのに・・・

・・・「ぎし」  またあの音だ。
そして何かが一瞬、光った。「・・・あみきり」
え?あみきり?「あみきり」ってなんだ?
それになんで、そんな単語が頭に浮かんでくるんだ?
・・・・・・・

気がつくと、家にたどり着いていた。
だが、今のは一体なんだったのか?
思いついて子供の頃の妖怪の本を引っ張り出した。
ミニミニストーリー3・・・・妖怪「あみきり」_e0063653_1523439.jpg

あった。
使ってもいないのに、網や綱が切れていることがあり、
それは「あみきり」という妖怪の仕業だという。
鋭いはさみを持ち、海老のような体をしている。

カバンの肩紐の切り口、あの音、一瞬の光、
ふと思い出した「あみきり」と言う名前。
何かが・・・・・・何かが、起こった・・いや起こっている。

                       つづく(たぶん つづく)

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<ミニ後解説>
はい、どうもぉ。前説に続いて、またまたブリズでございます。
本日は「あみきり」さんにおいでいただきました。
「また来てくださいねぇ」
今、手のはさみをギシギシ言わせながら帰って行かれました。

そして、今日、わかりましたね。
あの「クダン」の会社員、そう「天井嘗」の会社員です。
苗字が「深草」というんですね。また、同僚のところにも怪異が
起こり始めました。どうなるんでしょうね。
僕にもわかりません。

さて、この「あみきり」という妖怪。実はよくわかんないんです。
鳥山石燕の絵には登場していますが、出自がわかんない。
文献とかにもあまり出てこないんですね。僕が知らないだけかも
しれませんが・・。ただね、人間には、直接 危害を加えないんです。

おそらく、漁師さんなどが網を点検したときに、切れているところが
あり、そのまま妖怪になったんじゃないかと・・。妖怪さんのせいに
すれば誰も傷つかずにすむ。
また、その、人のせいにする人間を皮肉っているのかもしれません。
つまり、この「あみきり」とは、
「人間の心の自浄作用、もしくは保身のために生まれたものじゃないか」
と、僕は思うのです。      長くてゴメンナサイネ。

絵:鳥山石燕 百鬼夜行図より

by brizu | 2006-03-15 15:25 | 妖怪  

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