ミニミニストーリー4・・・・妖怪「えんえんら」

始めの解説
久しぶりの妖怪シリーズです。
このシリーズに初めて「女性」が登場です。
モデルは特にありません。
今回登場するのは「えんえんら(煙煙羅)」です。
その名の通り、煙の妖怪です。
4作目に突入。これで前振りが終わりです。
の、予定ですが・・あくまで未定です。
今回は文体も少し変化を付けました。

それでは、よろしければ、ごゆっくりどうぞ。
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亜佐美は帰る支度をしていた。
ちょうど、同僚の深草真一と秋山雄吾の立ち話が聞こえてきた。
クダンとか網きりとか言っている。
何を話しているのかは、まったくわからない。

特に興味があったわけでもない。
まっすぐ帰ろう・・。

コンビニで弁当を買い、家に帰ると、窓を開け、
風呂のボタンを押し、とりあえずタバコに火をつける。
メンソールの細いタバコから一口煙を吸うと、ようやく人心地だ。
いつものそのパターンを繰り返し、鏡の前で化粧をおとす。

その後、テーブルに向かうと、
「フゥー」 と、深いため息を一つつき、
弁当のラップをはずした。
タバコをせわしなく消す。
これもまたいつものパターンだ。

テレビをつける。
流行らしいお笑い芸人がコントをしていた。
「今日も変わり映えのしない一日だなぁ・・」
思わず独り言をついていた。
恋人が欲しいと思ったこともある。
が、こちらからモーションをかけようと思ったことはない。
元来、相手が男性に限らず、積極的に話しかけられるタイプではないのだ。
人より少し整っている顔立ちだが、目立つ化粧をするほうでもない。
つまりは、「暗い」のだ。
音楽を人並み以上に聴いたりもするが、
それを誰かと共感しようとも思わない。
同僚の秋山などは、根暗女と思っているに違いない。
それが証拠に事務的な話しかしてこない。

弁当を食べようとしたとき、横の灰皿に目が行った。
煙が出ている。先ほどちゃんと消えてなかったようだ。
なんだか少し煙が多い。あわてて消そうとしたその時、
「ザワッ」
家の中に風が吹いた。煙が揺れた。
窓から風が入ってきたらしい。
その煙が天井の方でさらにゆらぐ。
一瞬、煙の先端が顔に見えた。
「エッ?」。
ミニミニストーリー4・・・・妖怪「えんえんら」_e0063653_1457208.jpg

「〇△×☆・・・」。
口が動いたように見えた。
その動きは
「かわるよ」といったようにも「おわるよ」と言ったようにも見えた。

「エッ!」。さらに驚く。
亜佐美は目を凝らした。
一瞬の後には顔は消え、タバコの煙が揺れているだけだった。
「今の何???」。
だが二度となにも起こらない。
「気のせいかぁ」。
心持ち大きめの独り言になった。

「あぁー疲れているのかなぁ」。
亜佐美は食事も急いで済ませ、風呂に入った。

部屋の窓から出た煙は、もの言いたげに、
しばらくたゆたっていたか思うと、おもむろに消えた。
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終わりの解説
ということで、いかがでしたでしょうか。
普通に煙を見ても、なんとなく一瞬人の顔に見えたりすることは
あるでしょう。その様子を不思議に感じ妖怪としたのでしょう。
煙羅煙羅(えんらえんら)とも呼ばれるこの妖怪は
ゲゲゲの鬼太郎にも登場します。

えんえんらは、やはり人に危害をくわえたりしません。
絵に皮肉や苦笑を持ち込む鳥山石燕も、この絵には
含みを持たせていないようです。
ただ、この時代で大きな屋根と、庭があり、庭には松が植えられ、
それを見下ろして、少し笑い、まさに煙として消えていく。
それは庶民の悲哀が含まれているかもしれません。

いずれにしても、
ただの煙でも神秘性を感じ人格を持たせたなんていう
日本人の感性がステキじゃないですか。
これもまた、愛すべき妖怪の一人です。

さて、クダンを感じ、天井なめをみた深草に
網きりを思い出した秋山、そしてえんらえんらの、亜佐美
彼らは今後何に巻き込まれていくのでしょうか・・・。
乞うご期待です。
(ってほとんど期待されてませんが、そこはそれでも進めます。。^^)

今日の解説はこの辺で。

by brizu | 2006-04-20 14:57 | 妖怪  

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