カテゴリ:透三郎シリーズ( 4 )

 

テスト版時代物 「落雲の剣 (細波透三郎仕事帖)~序~」3回目

はい、今日は第三回目です。
そろそろ、序章を終わりにしないといけません。
しかし話が進みません。
いよいよ、細波と名乗るわけがわかるかもしれません。
ここまで読んでくれた方は、
このさい、ついでです。今回も読んでくださいね。

では昨日の続きです。
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るいは話が核心に触れると察し、部屋をでた。
朋時がつづけた。
「明暦の大火以来、この江戸は新しい街を作ってきた。
 民に力があるのはいい話よ。それが無い国は滅ぶ。

 だがな、そうした復興の影には利権も渦巻く。
 それだけでなく、この何代かの上様の間に
 改易された大名、旗本の数はかなりに上る。
 おのずと、あぶれた浪人どもが江戸に集まる。

 町奉行所も手一杯なら勘定方、目付も手一杯だ。
 この街の庶民を守るのも限界がある。
 そこで、透三郎にはわしの手の者として、
 江戸を守ることに力を貸してほしいのよ。」

「透三郎でお役にたつので?」
「おう、町奉行所が表の守りなら、裏の守りとして
 透三郎には動いてほしいのさ。
 そこでだ・・・」
「裏であれば、名は出ないとはいえ、田辺を名乗れば、
 三河以来のおぬしの家にも迷惑をかける。」

一瞬、間があいた。獅子脅しが鳴った。
「心水流には細波(さざなみ)という奥秘の剣があるという。
 どうやら透三郎はそれを伝授されているらしい。
 そこから姓をとり、「細波透三郎」と名乗ってもらっておる。
 その細波透三郎にな、剣をもって、江戸の守りを頼みたいのさ。」
「よ、よしなに」

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その日のことである。
清衛門は屋敷に着くと、家人にも「しばらく一人にしてくれ」と告げ、
縁に座り考えていた。阿部朋時の頼みごとというより透三郎のことである。
清衛門も一人の父として、透三郎がかわいくないわけではなかった。
部屋住みとしてすごすしかないからこそ、一人立ちしてほしく、
辛くあたってもいたのだ。

鈴虫が「リン」と鳴いた。
「そういえば、虫の声も気がつかなかった。」
一人語ちて頭を上げたとき、
裏の門が開く音がした。
「父上、本当に勝手をして、ご迷惑をおかけしておりました。」
「と、透三郎!」清衛門は思わず腰をうかした。

しばらく間があいた。再び鈴虫が「リン」と鳴く。
「透三郎、こっちにこい。」
「私が行ってよろしいので・・」
「あたりまえだ。お前はわしの子であろう」
透三郎は再び頭を下げると、清衛門の前に立った。
「よく無事でいてくれた。すまなかったな。」
清衛門は涙をこらえると、それをいうのがやっとであった。
蟋蟀がはねた。

「父上、私の・・・」
「いや透三郎、もう言うな。阿部様のお屋敷でお前を見たとき、
 その目に昔あった険が消え、澄んでおった。
 お前はそれだけの修行をしてきたのだろう。」

それから、ふたりは無言で縁に腰掛けていた。
月が中天にかかっていた。
無言でも二人の心はお互いを思っていた。

半刻ほどすぎた。透三郎が立った。
「母には会ってゆかぬのか。」
「不肖の倅ですから、せめて日のある内にまいります。」
「そうか。お前が無事であったことだけは伝えよう。
 それだけでも、喜ぶにちがいない。
 ここはお前の家だ。いつでも来るが良い。」
「はい。」

門を出た透三郎の胸に、「すぅ・・」と、秋の風が吹いた。

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ということで、無理やり序章の終わりです。
推敲がたりてません。
変なところはご容赦ください。

次、透三郎が出てくるときは、事件帖に入れそうです。
また、透三郎が使う剣についてもわかってくるでしょう。

でも本当にここまで読んでくれた方には、心から感謝いたします。
ありがとうございます。

by brizu | 2007-10-03 09:30 | 透三郎シリーズ  

テスト版時代物 「落雲の剣 (細波透三郎仕事帖)~序~」2回目

はい、というわけで透三郎の仕事帖ニ度目の登場です。
前回は、5年前に飛び出した三男坊の透三郎に
なんと、時の老中、阿部朋時の屋敷ででくわし
田辺清衛門が腰をぬかしたところまで書きました。
今回はその真相がわかるかも・・。
そして、透三郎の仕事帖にはいれるかどうかというところです。

では、始まり、始まりぃ・・・。

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清衛門は腰をぬかし、無様にひっくり返ってしまった。
「と、透三郎!・・・・お前が何故ここに・・」
かすかに笑みを湛えた透三郎は静かに言った。
「父上、長のご無沙汰をしております」。

清衛門は老中の前であることも忘れうろたえてしまった。
それを見た朋時は清衛門に言った。
「清衛門、驚かしてしまったな。
 透三郎とは色々とあっての、
 父であるそのほうには、
 話をしておく必要があると思ったのよ」。
「は?」
「まずは少し落ち着け・・」
朋時は清衛門に酒を注いだ。

「わしが、透三郎と会ったのは二前年ほど前のことよ。
 まずな、奥の「るい」のことから話さなければならぬ.。」
「お、奥方さまのことで・・・」
「るい の実家は、品川宿で、参勤の時の本陣にも使われる
 旅籠、今田屋じゃ。」

江戸幕府の役職は、将軍を頂点に、大老、老中、若年寄となり
老中の下に大目付を筆頭にした各目付、
南北に代表される町奉行、寺社、普請などの各奉行
若年寄の下に奥医師、天文方、小石川薬園奉行などの諸事を執り行う役
というように、
ほとんどの業務が、老中と若年寄の配下に組み込まれていた。
よって、老中、若年寄の職に付くということは、
幕府の中枢を担うことであり、名誉ではあるが、何よりも激務であった。

朋時が続ける。
「わしが老中に付いたのは、ちょうど二年半ほど前なのは
 知っておろう。丁度明暦の大火からも四年ほどのことで、
 伊豆様もお弱りにはなっていたが、まだまだお力を持っておった頃よ」
「は、あの時分はみなが大変でありました」
と少し落ち着いた清衛門も、返答できる余裕が出てきた。

「おう、その方も、あちこちの普請で寝る間もなかったようだの。
 わしもここに戻ることもかなわなくての、夜は物騒でもあり、
 お上に願いあげて、「るい」を今田屋に帰しておったのよ」
「だがな、品川宿も、材木やら、新しい家具やら物資を運び込む
 入り口よ。人が集まりゃ、無頼のものも増えてくる」
「確かに、そうでございますな」
「るいもな、実家の近くで気が少し緩んでおったようだが、
 親戚の家に言った帰りのことよ・・」
「な、なにかございましたので?」
「浪人者三人にとりこ囲まれたそうだ」
「へ、よ、良くご無事で・・」
「そのときに、るいを救ってくれたのが、透三郎よ」
「は、はぁ?」

朋時が、るいに目を送る。
本来、主である朋時が話をしているときに、
家のものであっても話に入ることは許されない。

が、朋時自身が次男であり、しかも妾にできた子であった。
阿部の本家よりも下町の別家ですごし、常に自由に歩き回っていた。
家督を継いだのも、長男が病死してしまい、また正妻にできた弟も
早くになくなっていたことから、仕方なく継いだともいえる。
自分にできることは自分でする、というのが朋時の流儀でもあったのだ。
るいもそんな朋時だからこそ、家柄違いをおして嫁いだともいえる。

目配せに答え、るいが話し出した。
「あのときは供のものをつれ、縁者に参った帰りでございました。
 まだ、そんなに暗くも無かったのですが、供の者と今田の家に戻る途中
 宿はずれで三人に取り囲まれたのです。
 私の身分も名乗りましたが、それを聞こうともせずに
 「金を出せ」と言われ迫ってまいりました」
「そ、それはとんだことで・・」
「一人の浪人が刀を抜こうとされたとき、透三郎様が間に入ってくださったのです。
 それからは、あっという間でした。透三郎様がどうされたのかも見えませんでした。
 気が付くと三人の浪人がうずくまって呻いておりました。」

朋時が再びそれをうける。
「その後、今田屋まで、るいを送ってくれたそうだ。
 今田屋の主殿も礼がしたいと、
 何度も名前を聞いたが教えてくれなかったそうよ。
 しかも、その礼もうけとらず、出ていっちまったらしい。今時珍しいじゃねぇか。
 その心意気が気に入ってな、今田屋に調べてもらったら、
 宿のはずれの心水流の道場にそれらしい侍がいるってなってな。
 その道場はわしの知り合いが師匠をしているところでもあったのさ。」
「そうでございましたか」
清衛門は傍らに座っている透三郎をみた。
透三郎は微笑みを絶やさずに話を聞いていた。

「そこの道場主は岡野道心というものでな、透三郎のことはすぐに知れたわ。
 心水流というのは、心形刀流の流れをくむ実践向きの剣法よ。
 それによるとな、透三郎は道場始まっていらの強の者とのじゃ。
 清衛門、お主の息子殿はるいの命の恩人ということよ。」
「さ、左様で・・」
「で、この家の用人にそこに行かせたらな、
 やっと身分を話してくれたのだが、その方の息と知ったときは
 わしもおどろいたわ。」
「め、面目しだいも・・」
「清衛門、なんど頭を下げたら気が済むのだ。しかも礼を申しているのは
 こちらのほうぞ。
 そこでだ、清衛門・・・・・。
 ここからはおぬしに頼みよ。」
「はは、なんなりと・・」
「それ以来わしの手の者として、この江戸で力を貸してくれておるのだが、
 透三郎をもうしばらくわしに預けてくれぬか?」
「と、申されますと・・」

るいは話が核心に触れると察し、部屋をでた。

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はい、ということで、結局、事件帖には入れませんでした。
次回続けてPART3をUPします。

by brizu | 2007-10-02 12:49 | 透三郎シリーズ  

予告 次回は、透三郎シリーズの第二回目

次回、
細波透三郎シリーズの第二回目を蔵出しします。
それがほぼ丁度1年ぶりですから、
どれだけサボっていたことか・・

前回は、5年前に飛び出した三男坊の透三郎に
なんと、時の老中、阿部朋時の屋敷ででくわし
田辺清衛門が腰をぬかしたところまで書きました。
今回はその真相がわかるかも・・。
そして、透三郎の仕事帖にはいれるかどうかというところです。

その前回をTBしておきます。
右のカテゴリで 透三郎シリーズでも確認できます。
もし、「読んでもいいよん」というか方がいらっしゃいましたら
次回も読んでくださいね。

by brizu | 2007-10-01 17:33 | 透三郎シリーズ  

テスト版時代物 「落雲の剣 (細波透三郎仕事帖)~序~」

先ほどの1本で終わりにしようと思いましたが、
テストケースとして、少しだけ構想としてもっていた、時代物シリーズを
出してみたいと思います。妖怪はでません。
題して、「落雲の剣 (細波透三郎仕事帖)~序~」
はじまり、はじまりぃ・・・

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その時、細波透三郎(さざなみとうざぶろう)は思った。
「今回の仕事は浮かばれねぇ」 ということを・・・

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透三郎は寄合席を勤める千石の旗本、田辺清衛門の三男坊として生まれた。
清衛門は二人目までは男でも良いが、三人目は女がいいと思っていた。
力のある老中家などに嫁がせることができるからだ。
中でも時の老中、阿部周防守朋時(ともとき)は清衛門の上司にもあたり、
幕府内でも大きな力を持っていた。清衛門も他に習い、老中に取り入る手段が
欲しかったのだ。
部屋住みの透三郎は兄達に習い、論語などを学びはしたが、
家人からの扱いは適当で、中元の伊助よりも声を掛けてもらえない。
しかも望まれずに生まれてきたと知り、しばらく八つ当たりのように
遊びまわった後、プイっと家を飛び出し、五年がたっていた。

丁度そのころ、透三郎が二十二の春に、突然、阿部朋時から
清衛門に声がかかった。
「その方に話しがある。下城したら屋敷に来い」 と、いうのだ。
清衛門は、自分が気付かないうちに何かをしでかしたかと
恐る恐る阿部朋時の屋敷を訪れた。
そこには、意外な展開が待っていた。
まずは客間に通され、酒肴が並べられた。
訳もわからず待っていると、程なくして朋時が障子をひいた。
「おう、清衛門、急に悪かったな・・
 なんだ、せっかく酒肴を用意しておいたのに箸もつけてないのか。
 すまんな、家のものに先に飲んで置くように伝えろといったのにな」。。
「本日はお屋敷におよびいただきありがとうございます。
 お叱りをいただくものと思っておりましたので、このように御客間にまで
 通していただくとはどうしたものかと・・」
と全て言い終える前に
「清衛門、堅苦しい挨拶は抜きだ、まずは飲め。
 お前は固くていかん・・」
と酒を注がれてしまった。

やがて二人とも酒に落ち着いてくると、阿部がきりだした。
「ところで清衛門、お前のところに透三郎というものがいるだろう。」
あわてた清衛門は
「えっ、お、おりますが、世をすねて、家を飛び出してしまいまして・・
 透三郎が、なにかとんでもないことをいたしましたでしょうか。
 私の不徳のいたすところでございます」。
と敷いていた座布団もおり、平伏してしまった。

「これこれ、色々事情は聞いておる。
 だがな、清衛門、お前を責めるような話しなら屋敷に呼んだりせぬわ。
 話もできぬから、頭をあげて、先ほどのように座れ」。
そういうと、阿部は廊下のほうを向き大きな声でいった。
「これに参れ!」
すると障子があいて家人とともに現れたのは、五年前に家を
飛び出した透三郎であった。
清衛門は腰をぬかし、無様にひっくり返ってしまった。

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はい。まずはここまでです。

by brizu | 2006-10-03 16:29 | 透三郎シリーズ